AMSA:先端医科学スポーツアカデミーでのトレーナー育成システムとは?

2014.11.21

全国にトレーナーを養成する専門学校やアカデミーは数多くあります。しかし、医学的な見地からの教育を行う学校やアカデミーは皆無と言うほどありません。今回は、AMSA(先端医科学スポーツアカデミー)のトレーナー育成システムをご紹介します。

―― 右へ倣え方式の弊害

トレーナーと一口に言いましても フィジカルトレーナー、コンディショニングトレーナー、メディカルトレーナー、メンタルトレーナー・・・など数多くのトレーナーが存在します。
実際、トレーナーの定義が明確でないためトレーナーの指導内容の種類も異なります。
実際のスポーツ現場において残念ですが、トレーナーの真の活躍の場はとても少ないのが日本の現状です。技術指導者が、実技指導の延長でトレーニングを画一的に指導したり、同じ内容のトレーニングを繰り返したりさせています。

皆さんは、子供の頃、部活動で静的ストレッチ、腕立て伏せ、腹筋、背筋、短距離ダッシュ、ジョギング・・・といった競技とは無関係でも基礎体力を向上させる?といったトレーニングを行った経験があるはずです。

はたしてこれらのトレーニングがどれほど専門競技に役立ったかは検証されていないと思います。
とりあえず慣習的にこれまでやってきたことだから、先輩方が必ずやってきたことだから、どの学校でも同じようにやっているから・・・つまり右倣え 方式ですね。

どうしてそのトレーニングが必要なのか、どの程度、どれくらいの頻度で、どれくらいの時間行うのが適切なのか?考えたことはありますか?

疲れ果てるまで行って本当にフィジカル能力が向上したり競技パフォーマンスが向上するのでしょうか?
むしろ怪我をしたり疲労を残したまま競技の練習に入って集中できないこともあるのではないでしょうか?
これまで多くのスポーツ現場でアスリートや子供たちを指導させていただきましたが、指導者の方々で トレーニングの理論的な意義や手法を理解していただける方は多くありませんでした。

どうしてその腹筋運動するの?と問いかけても明確な回答が返ってきません。
腹直筋だけ鍛えても 体を前屈するような動きがほとんどない競技であれば かえって体幹のバランスを乱すことになります。当たり前のように行われている 前屈する腹筋運動にどれだけの効果がありパフォーマンス向上のエビデンスがあるのか?疑問です。

腹筋運動をすることでどの部位の筋肉がどのように強化されどのようにパフォーマンス向上につながるのか?しっかり説明を現場で受けて行われているケースはこれまでほとんど経験しませんでした。
そこでトレーナー登場・・・というわけですが。

私はトレーナーは大きく 3つの役割で担当が分けられると思います。
1つは、フィジカルトレーナー、ストレングストレーナーとも言いますが、各種の負荷を体にかけて筋肉強化、心肺機能などを行う身体強化のスペシャリストです。

もう1つは、コンディショニングトレーナー、メディカルトレーナーやケアトレーナーも同じ意味の呼び方で使用される場合があります。鍼灸師や理学療法士といった有資格者も多いのがこのトレーナーの特徴です。いわゆる身体強化よりも身体のケアや競技前のコンディショニングを担当します。マッサージを基本としてケアやコンディショニングされる業務が多いのがこのトレーナーの特徴です。

3つ目は、メンタルトレーナー。競技前後の精神的な支えになったり集中力を向上させ、緊張する競技中でも平常心でパフォーマンス向上できるように指導するトレーナーです。まだ、日本では馴染みがないばかりか エビデンスが確立されていない指導法も行われて効果は未知数のことも少なくなく今後に期待されるトレーナー業務です。

このように分類できますが、現場ではこの3つを一人のトレーナーが行っているケースも目にします。
石川遼選手のフィジカルを鍛え上げ史上最年少でプロゴルフ賞金王へと導いた、仲田健トレーナー(ホリプロ所属)は有名です。仲田トレーナーほどの実力と実績があっても、医学的根拠があるトレーニング法の習得とスポーツ医学を一から学ぶため、順天堂大学大学院医学研究科 修士課程で自らのキャリアアップをさらに向上するためにスポーツ医学や研究手法を学んでいます。

トレーナーは経験や勘で指導を行っているケースが少なくありませんがエビデンスのある指導法こそが次世代の指導法であることは明白です。私は、トレーナー、アスリートにとって大切なことは次の4つだと考えています。

1:コンディショニング
2:トレーニング
3:ケア
4:治療(鍼灸師、柔道整復師、医師、歯科医師など有資格者のみが行える業務)

4は、有資格者でないと難しいことも多いのですが、1-3は
しっかりした知識や理論に沿って行えば決して有資格者でなくても難しくありません。
私は、日本におけるトレーナー事情があまりにもインフラ整備が遅れ、トレーナーが活躍できる場も少なく、トレーナーの皆さんへの教育も十分でないと感じています。

トレーナー教育には絶対に専門医が担当するべきと考えています。もちろん、詳細なトレーニングに関する知識や実績は有能なトレーナーの方があるかもしれません。しかし、トレーニングは科学であり、身体機能を扱う以上、医学なのです。
医学的知識やアプローチはトレーニングの質を大きく向上させエビデンスがあるトレーニング法による指導は、アスリートにとって大変有意義なものになるはずです。

実際、私は、スポーツ医学の専門医として20年間、トップアスリートのコンディショニング、トレーニング、ケア指導にあたり治療も担当してきました。もちろんメディカルチェクや格闘技の大会ではリングドクターなど試合が安全に進行するようにサポートを行ってきました。

いかなるトレーナーよりも医学的根拠があるアスリート指導を行ってきた経験があると自負しています。

―― AMSA教育プログラム

この自分の経験から少しでも多くの方に、トレーナーという業務を質が高く、トレーナー報酬も付加価値を高めて高いレベルに維持できるようにお手伝いさせていただいています。

そこで医学的根拠があるトレーニング法、エクササイズ、健康法が指導できるように 私どもはAMSA(先端医科学スポーツアカデミー)でトレーナーの教育プログラムを作成し各分野のスペシャリストや専門医が教育指導にあたります。

他の専門学校やトレーナーアカデミーではないシラバスでは、メディカル部門の教育として図1にありますように解剖学以外にも生理学、生化学、栄養学、心理学、自律神経測定の基礎理論である心拍変動解析理論や アスリート指導には欠かせない アンチ・ドーピング、スポーツ外傷・創傷ケアも履修できます。

トレーニング、ケア部門では、実技として自律神経機能検査実習や 自律神経トレーニングでもあるセル・エクササイズ実技講習、マッサージなど各種ケア法の実践を履修します。
トレーナーはアスリートなどの指導者でもあるためコーチングを学び 指導者としての力量を高めます。
トレーナーとして活躍するには幅広い知識が必要です。自らが創傷ケアを行う立場ではなくてもアスリートが怪我をした時にファーストエイドを行うための知識は必須です。

アスリートが転倒して擦過傷を負った時も、患部を消毒するようなことがあってはいけませんし、消毒しようとするアスリートがいたら制止して正しいケア法を伝える必要があります。このためには正しい創傷治療の理論・知識を持っていることが前提になります。

スポーツには怪我がつきものですし最初の処置が選手の競技人生を左右することすらあるのです。
トレーナーはただ、トレーニング指導を行えばよいのではなく幅広い知識でトレーニング以外のコンディショニング指導、ケアのお手伝いを行ってこそ本来のトレーナーとしての役割が遂行することになります。
これを支えるのが医学的知識、エビデンスになります。

理論履修と実技履修トータルで最低50時間が必要であると考えています。
もちろん50時間の履修を終了すれば即戦力としてのアスリート指導を行うことができるわけではありません。
履修して身につけた知識、能力はまずは AMSAでの認定試験を受験し 合格してライセンス取得することが自分の自信にもつながるのです。

現在、AMSAではトレーナー養成シラバス、認定試験制度の設立を準備し 多くの医学的根拠に基づくトレーニング指導ができるトレーナー教育に務める予定です。

AMSAの理事、評議員には多くの専門医を含めスポーツ&トレーニング指導のスペシャリストが揃います。
2020年を目標にスポーツアカデミーとして最大の組織を築き、トレーナーを目指されている方々へ情報、教育、仕事の提供などあらゆる面でのサポートができることを考えています。

トップアスリートのトレーナーになりたい・・・でもどうすればよいかわからない・・・という声をよく聞きますが、AMSAでは、優秀なトレーナーにはトップアスリートの専属トレーナーとしてご活躍できる機会を提供できるネットワークも作り多くのトレーナーの皆様に夢を現実な形で提供してまいります。