個人特性を知ればトレーニング効率が上がる!!

2014.06.21

これまで各種トレーニング法の理論や手技を解説してきました。
数多くのトレーニングが存在しスポーツ競技によってトレーニング内容が異なります。しかし、個人特性が競技特性以上に大きく異なるにも関わらずスポーツ指導の現場では一律に同じトレーニングを強要して行わせている現状があります。

―― 個人特性を知るべし

特に学校教育や体育系部活動、さらにはプロスポーツでもあるプロ野球やサッカーチームでの準備運動や全体練習では基本トレーニングは個性を無視し全て同じトレーニングメニューが組まれています。

個々に応じたトレーニング法の指導が行われている現場はおそらくほとんどないでしょう。
私はこれまで多くのトぷアスリートたちをパーソナルトレーニング、コンディショニング指導を行い成果を得てきました。

私が一番考えるポイントは、1:競技特性 2:個人特性 3:個人能力 です。
指導させていただきますアスリートのこの3つをしっかり把握すれば確実に効果が実感できるトレーニングやコンディショニング法の指導を行うことが可能です。

私と15年以上、一緒に多くのトップアスリートを指導してきたカリスマフィジカルトレーナーとしても評価が高い  仲田健トレーナーも同じ考えの下でアスリート指導を行い結果を出してきました。

私ども 順天堂大学医学研究科 修士課程では仲田健トレーナーだけではなく、ゴルフ界のカリスマ指導者でツアー2勝、究極の理論家としても知られる横田真一プロがスポーツ医学を学んでいます。
その横田真一プロが唱える4スタンス理論。
かなり完成度の高い個人特性を分類した理論ですが、残念ながら理論と言ってもエビデンスの確立には至っておりません。

しかし、4スタンス理論の分類や個人特性の評価法には大きな可能性を秘めており 私もこの理論をさらに進化させ個人特性を把握しマッチしたトレーニグ法の指導をスタートさせています。
今回はこの個人特性に焦点をあててトレーニング法を解説させていただきます。

―― 身体の初動特性は大きく分けて2種類

人間の初動特性は 2種類に分類されます。動き出しのパワーの出力体制が、

1:身体全体を縮んでパワーを出力するタイプ  

2:身体全体を伸ばしてパワーを出力するタイプ

1は、握力計を握って握力を測定する時、身体を縮ませて力を出そうとします。
2は、握力計を握って握力を測定する時、身体を伸ばして力を出そうとします。

ご自身はいかがでしょうか?どちらが力が出て握力値が高いでしょうか?

1では、鞄を、鞄をしっかり掌で握って持ちます
2では、鞄を、指側で引っ掛けるように握って持ちます。

これは、足の重心の感覚でも一致します。
1では、踵に重心があり 階段の上りが得意です。
2では、つま先に重心があり 階段を下るのが得意です。

高い声を出す時ものどを縮ませて 出す人もいれば、のどを伸ばして出す人もいますが、まさしく個人特性なのです。
無意識で自分が最もスムーズに動く身体の動きを調整してパワーを出力しているのです。
さらに 1では、肘を固定して右上腕を動かすよりも肩を回すように肘を自由に動かすように上腕を動かすことが最もパワーが出るのです。

2では、肘をあまり動かさないように腋をしめ 前腕を動かすことでスムーズに上腕の動きをコントロールしてパワー出力します。

打撃系格闘技で ファイタータイプ、ボクサータイプ、カウンタータイプ・・・各種 タイプが存在するのは 初動動作が踵に起因するか、つま先に起因するかによるためです。

自分の最も得意でスムーズに身体が動く個人特性をしっかり認識して普段のトレーニングに取り組めば効率もアップして無駄な動きが無くなります。

縮んでパワー出力を出すタイプのアスリートにいくら身体を伸ばしてパワー出力を出そうとさせててもうまくいきません。
指導者は自分の個人特性に応じて指導を行いがちです。自分ができるから指導を受けるアスリートもできるだろう・・・と希望的推測で指導を行えばタイプが違うアスリートはうまくできないばかりか、故障の原因にもなってしまいます。

―― 指が身体の運動特性を大きく左右

私は以前から指の動きと身体の特性に注目して身体のパワーに関して研究や実験を繰り返してきました。
その中でわかったことは、

・小指はアクセル
・親指はブレーキ
・中指はニュートラル
・人差し指と薬指は方向指示器

多くのスポーツで親指に力を入れるスポーツはありません。ほとんどが小指をしっかり握りこむ、小指に力を入れて行うスポーツがほぼすべてです。
ゴルフクラブは小指に力を入れて
剣道の竹刀も小指に力を入れて
レスリングのタックルも小指から
柔道も相手の道着を掴む動作は小指から
ボクシングも小指を握りこむように拳を作ります。
・・・

あらゆるスポーツが小指の握る動作にコントロールされていることがわかります。

では、親指はどうでしょうか?

親指は小指と逆でほとんどのスポーツでアスリートは親指には意識を入れませんし、強く握ることもありません。
しかし、緊張した時は親指に必要以上に力を入れて手を握ってしまうことがあります。

野球のピッチャーも一流のプロ野球選手では親指に意識は入れません。アマチュア野球のピッチャーがピンチで棒玉投げて打たれてしまうのは 親指に緊張で力が入り身体全体のパワー出力にブレーキがかかってしまったのが原因です。

一番力が出そうな親指ですが、親指に力を入れて行うスポーツはありませんね。
これほど指と身体の関係は親密なのです。

私がアスリートへトレーニグ指導を行うときは、必ず指の意識を指導しています。

―― 人差し指優位、薬指優位

人差し指と薬指の動きは、大きな個人特性を表します。
コップを持つとき、人差し指を浮かせて持つ方が持ちやすいでしょうか?
それとも人差し指をコップにしっかり当てて持つ方が持ちやすいでしょうか?

瓶のキャップを外す時、人差し指を使いますか?それとも中指と薬指を使いますか?

人差し指の動きが優位な方は、上腕を前に回すことが得意ですが後ろへ回すことが苦手です。薬指優位な方は、上腕を前に回すことは苦手ですが後ろへ回すことは得意です。(水泳では クロールが得意、背泳ぎが得意がある理由はこのためです。)

皆さんは腕を回してみましょう・・・
言われたら どちらへ回すでしょうか。

人差し指優位の方は、太ももが 内旋優位・・・つまり内股気味の体勢が身体全体の可動域が向上します。
薬指優位の方は、太ももが 外旋優位・・・つまりがに股気味の体勢が身体全体の可動域が向上します。
内股、がに股 それぞれの体勢で身体を捻じってみてください。
どちらが身体の可動域が大きいでしょうか?

薬指優位の私はがに股で可動域が大きくなりますが、人差し指優位の方は内股で身体の可動域が大きくなるはずです。
個人特性はわずかな体勢の変化で身体パフォーマンスに大きな影響を及ぼします。

個人特性を知って日々のトレーニグや自分に合った動きを極めることが効率よくパフォーマンス向上に繋がります。
集団練習で同じ動きやトレーニング、準備運動ばかり行えば 必ず故障者がでるのです。これは自分に合わない動きを強要され必要以上に負荷が身体の一部にかかって怪我に繋がるのです。
指導者は個人特性を配慮して指導にあたるべきなのです。

―― 身体を捻じって出力するタイプと身体を左右入れかえて出力するタイプ

走る時に、腋を締めて 腕の左右の前後を入れ替えるタイプと身体を捻じって肘を大きく横へ動かすタイプがあります。
ウサインボルト選手や高橋尚子選手は、腋を締め まっすぐに腕を前後に振って身体の推進力を生み出しています。

アテネ五輪金メダリストでもある野口みずき選手は、身体を大きく捻じって肘を自由に横へ振って走ります。
一流と言われるアスリートには個性がありこれは、彼らが生まれ持った本来の個人特性を伸ばした結果なのです。
キックボクサーでも前蹴りが得意な選手、回し蹴りが得意な選手がいますが、両方スムーズにできる選手は実は少ないのです。

身体を捻じるのが得意な選手は回し蹴りを得意とします。
しかし、身体の左右を入れ替えて出力を出す選手は 回し蹴りよりも前蹴りを得意とします。

カウンタータイプは、踵重心

カウンターが得意とする選手と高速ジャブを得意とする選手の動きは実は対照的なのです。
カウンターが得意とする選手は身体をいったん沈めてからエネルギーを貯めてパワーを出すタイプです。
つまり踵に重心をまず移してから身体を前へ送ります。

このため相手の動きを待ってそれに合わせてパンチやキックを放つのが得意です。しかし、高速ジャブを得意とするキックボクサーはつま先に重心があり素早い動きが可能です。ノーモーションでのジャブが得意なタイプです。
自分の個人特性を知って闘い方を組み立てる必要もあるのです。

肘を軸にするタイプ、肩を軸にするタイプ

身体を伸ばして出力するタイプはパンチを打つとき腋を締めて肘を中心にショートを出すとパンチにキレが出ます。ショートフックやジャブが得意なはずです。

身体を縮めて出力するタイプはパンチを打つときできる限り肘をフリーにして肩関節を軸に打つと破壊力が増します。
ロングフックやカウンター、ロングアッパーが得意なはずです。
このように打撃系格闘技にとどまらずあらゆるスポーツ分野のアスリートの個人特性に応じた動きは身体のパフォーマンスと直結しているのです。

私は技術を教えることが出来なくても個人特性を詳細に把握して アスリートに合った動きやトレーニングを指導することで驚異的な成果を得ています。

何も考えず 単調なトレーニグや練習を繰り返すことより 自分に合った練習やトレーニグを見なおず時期に来ています。
アスリートパフォーマンス向上は根性よりも正しい理論とエビデンス。
多くのアスリートや指導者の皆様に知っていただきたいことです。